店舗価値を上げる!「ストアギークサイネージ」誕生の舞台裏

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店舗価値を上げる!「ストアギークサイネージ」誕生の舞台裏
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こんにちは。広報の真鍋です。

2023年10月17日、フリークアウト・ホールディングスとフェズの合弁会社であるストアギークから、新たなリテールメディアサービス「ストアギークサイネージ」の提供がスタートしました。
プレスリリース発表後には、マーケティング関連のさまざまなメディアでご紹介いただき、注目度の高さを感じました。

<ご掲載記事の一部>
「日経クロストレンド」
定番棚に設置する新型サイネージ リテールメディア3つの課題克服へ
「AdverTimes.(アドタイ)」
定番棚に設置の新たなサイネージを開発 フリークアウトとフェズの合弁会社「リテール メディアサービス」の提供を開始
「MarkeZine」
フリークアウトとフェズ、リテールメディアサービス「ストアギークサイネージ」の提供を開始

今回のFEZ LOGでは、そんな「ストアギークサイネージ」誕生の舞台裏を、同社代表取締役の廣瀬隆昌さん(フリークアウトHD所属、写真左)と取締役の安藤尚人さん(フェズ所属、写真右)にインタビューしました。












ストアギーク設立の背景について、教えてください。

廣瀬:
フリークアウトは、2011年に日本初のDSP(Demand-Side Platformの略、広告主や代理店がインターネット広告を配信する際に、最適な広告枠の買い付け等を自動で行えるアドプラットフォーム)を立ち上げて以降、DMP(Data Management Platformの略)の開発、大手メッセンジャーアプリや民放公式テレビ配信サービスと連携した広告配信プラットフォームの開発など、フルスタックのアドプラットフォームを開発・提供してきました。

その後2016年には、PCやスマホ上の空間だけではなく、日本交通と共同でタクシーサイネージのプレミアムメディア「Tokyo Prime」を開始。今では当たり前のように搭載されている「タクシーサイネージ」という新たな広告メディアを創り出しました。
それまで、ダイエットや薄毛対策といったいわゆる“コンプレックス商材”の紙広告掲示がほとんどだったタクシーの乗車空間を、IoTサイネージを用いて決済サービスやプレミアムコンテンツを流し乗車体験価値を高めることで、タクシー広告の概念を変えたんです。

そして、2019年頃から私たちの持つこれらのマーケティングテクノロジーの技術アセットをリテール向けに展開していきたいと試行錯誤をしていました。

安藤:
私自身、以前フリークアウトに勤めていたんですが、2020年にフェズへ転職した際、フリークアウトでお世話になっていた方々にご挨拶に行ったんです。そこから、情報交換や「Urumo Ads」における連携が始まり、両社の強みを活かしたリテール向けの新しいインストアメディアを開発しようと、合弁会社「ストアギーク」を立ち上げました。

元々、フリークアウトHD代表の本田さんの中に「商品を手にする直前に目にするメディアが価値を持つ」というコンセプトがあり、インストアメディアをつくるということは決まっていたんです。一方で、現状のインストアメディアには様々な課題があり、そこを深掘りしていくところからのスタートでしたね。












2021年3月に設立後、どのような取り組みをしてきましたか?

安藤:
まずは、インストアメディアの課題を正しく把握しようと、両親会社の経営陣やストアギークの経営陣で合宿を行ったり、複数の小売店舗を実際にまわらせていただいたりしながら、課題の洗い出しや整理を行なっていきました。

廣瀬:
実際に店舗をまわって印象的だったのは、店舗にサイネージは置かれているけれど、メディア体験が作れていないという点でした。その場にデバイスは存在していても、消費者にとって見る必然性がなく、場合によってはノイズになってしまっていたんです。

例えば、棚の上に置かれているサイネージの場合、遠くから見てそこに何があるというナビゲーション的な役割は一定果たせると思うんですが、それと棚前で行うべきコミュニケーションは異なるものだと思います。サイネージのモニターを棚の上に設置するにしても費用はかかりますし、何かもっと良いアプローチはあるなと感じましたね。

安藤:
インストアサイネージというものに対して、リテールもメーカーも可能性は感じているものの、メディアサービスとしてはまだまだ課題が多いと捉えています。お店って、結局商品を選んで買う場所であって、メディアを見に来る場所ではないので、見せることの難易度の高さを感じました。
タクシー内等と違って、店舗内にはすでに商品パッケージをはじめ多くの情報で溢れています。その中でどんな形だと消費者が認識できるんだろう、という課題が明確になりました。












課題を解決し事業をつくっていくために、どのような取り組みをされましたか?

廣瀬:
最初の1年は、実際の店舗の商品棚にサイネージを置かせていただき、実証実験を行いながら事業化の道筋を検討していました。
アプローチ方法としては大きく2つあって、1つは定番棚(通常の商品棚)にタブレット端末を置かせていただくアプローチ、もう1つはシーズンもののエンド棚(長い商品棚の端に設置されている通路側の棚や台)にモニターを置かせていただくアプローチで、それぞれメディアとしてどう機能していくかを試しました。

しかし、定番棚の場合、どうしても品出しの際に邪魔になってしまい、邪魔にならないようにしようとすると棚の上の方に設置することになってしまう。そうすると、消費者の目に止まらなくなってしまう、という悪循環に陥ってしまうんです。
また、エンド棚の場合、そもそも期間限定の販促スペースでもあり、サイネージによる効果がどれほど購買に寄与しているのか分かりにくく、メーカーがシーズンのエンド棚を確保するのに加えて販促費を投じるか疑問が残りました。
そして、やはり店舗売上の大半を占める定番棚で効果的なメディアを作ろうという結論に達しました。

安藤:
店舗内のどの場所にどういう形のものをどのように置けば効果が上がるのか、試行錯誤の1年でしたね。いろんな形状のサイネージを試していく中で、他のサイネージと比べると小さくて薄い縦型のものを置いてみたところ、小さい割に視認性が高く邪魔にならないかもしれないとわかりました。

しかし、当初、オリジナルのデバイスをつくるという発想はなく、自分たちにそんな選択肢があるとは思っていなかったんですよ。早く事業化しなければという焦りもあって、実は、既存のサイネージをネットワーク化するような別の企画を起案していました。

そんな中で、廣瀬さんが縦型サイネージに可能性を感じて、自らプロトタイプ(試作モデル)を作ってくださったんです。それを実際に棚に設置して、フェズ社内の小売やメーカー出身者など詳しいメンバーに見せたら反応が結構良くて。その後、縦型サイネージで事業化できるかどうかの実証実験が始まりました。












「ストアギークサイネージ」の形状が誕生するまでに、そんな苦労があったんですね。

廣瀬:
プロトタイプが好評だったので、では、どうすれば形にできるかというところを必死になって考えました。フリークアウトは、数々の広告プラットフォーム開発を手掛けてきましたが、ハードウェア開発は素人。いろんな方のお知恵をお借りして、なんとか開発・製造ができそうかな、という方向性が見えてきました。

インストアサイネージの領域では、すでに他のプレイヤーが参入しているので、私たちは後発です。他社と同じことをやっても仕方がないし、既存のサイネージの課題を解決していないと意味がないんですよね。そうなると、やはり定番棚での消費者コミュニケーションという課題の解決にフォーカスし、独自の形状で課題を乗り越えるしかないと思い、ハードウェアの開発を判断しました。


デバイスの独自開発は大きな決断だったと思いますが。

廣瀬:
フリークアウトには4つのVALUEがあって、その1つに「最高の失敗」があります。失敗を恐れるよりも、まずは打席に立って挑戦しようという価値観なんです。失敗の中からしか学べないことってあるんですよね。だから、もし仮に失敗しても大きな財産が残ると思っています。

一方で、ストアギークとしてはこれで失敗したら次はないので、大きな決断ではありました。しかし、やるからには今までにない新たな価値を提供し大きな市場を狙っていきたいので、粘り強く両親会社と交渉して最終決断しました。












満を持して提供開始した「ストアギークサイネージ」。今のお気持ちを聞かせてください。

安藤:
ちょっと時間はかかってしまいましたが、既存のインストアサイネージが持つ課題とその解決策を徹底的に検証して、定番棚の設置に最適なデバイスを一から作っている開発メーカーはほぼないと思います。
フリークアウトHDとフェズがこれまで培ってきた知見や強みを詰め込んだ、市場を大きく変え得るクオリティの高いリテールメディアサービスが出来上がったと自負しています。

廣瀬:
紆余曲折を経ましたが、リテールメディアサービスとして、これから消費者にどのように受け入れられ購買行動を動かせるのか、実証していけるのが楽しみですね。
多くの小売店様・メーカー様と一緒に取り組みたいですし、是非やりましょう!と自信を持って言えるサービスができたと思っています。


デバイスの特長も注目ポイントですが、消費者の行動変容を起こすにはコンテンツも重要ですよね。

安藤:
その通りですね。消費者を動かす専用のクリエイティブコンテンツが載ってきて初めて、小売店様・メーカー様に価値あるサービスになると考えています。

マーケティング活動としては、効果検証しながらPDCAを回し続けることが必要不可欠ですし、フェズのリテールデータプラットフォーム『Urumo』を活用することで、それが可能になってきます。「デバイス×コンテンツ×効果検証」の3軸がリテールメディアとして機能し続けるために重要なポイントだと思っています。

店舗に来るお客様は、メディアを見るのが目的で来るわけではありません。わざわざ足を止めて何分もサイネージを見るのではなく、商品を選ぶ際に数秒間目に触れる程度です。その数秒間の中で映像や音声を使っていかに訴求力の高いコンテンツを作っていくか、今まさにPoCを進めていっているところです。












まずはどのような商材でご利用いただきたいですか?

安藤:
これまで実証実験を行った際に親和性の高かったオーラルケアカテゴリ(歯ブラシ・歯磨き・マウスウォッシュをはじめとした口腔衛生用品)を皮切りに、今後は注力カテゴリを広げていきたいと考えています。
小売店様・メーカー様にとって、テレビやデジタルメディア等と同じように広告出稿するメディアインフラにしていきたいですね。

廣瀬:
ストアギークサイネージがより効果を発揮するのは、棚前でのコミュニケーションによって態度変容が起きやすい商材、つまりお客様が棚前で買うときに迷いやすい商材です。ドラッグストアの中でも、オーラルケアはその代表的なカテゴリと言えます。


最後に、今後の展望についてお聞かせください。

安藤:
ストアギークでは「店頭をもっとクリエイティブに」というミッションを掲げています。ストアギークとしても、フェズとしても、お客様のお買い物体験を変える、それによってお客様がよりよい商品に出会い買いたくなるという事象をつくるために、リテールメディアサービスを提供しています。中でも「ストアギークサイネージ」は、メインストリームの定番棚において直球で挑むサービスです。
日本全国津々浦々のドラッグストア様の定番棚に当たり前に置かれている状況をつくること、そして、メーカー様も当たり前に使い続け、お客様も当たり前に情報を得るメディアインフラにしていきたいですね。

廣瀬:
ストアギークは、インストアメディア、インストアプロモーションのDXを通じて店舗価値を上げることを目指しています。以前、タクシー広告のあり方を変えたことによって乗車体験を変えることに成功しましたが、それを今度はリテール業界でも挑戦させていただきたい思っています。
ECで物を買う機会も増えてはいますが、まだまだお店で買う機会の方が多く、リテールメディアサービスを通じて、物を買う場所としての店舗の価値のさらなる向上に寄与できたらと思っています。



これから「ストアギークサイネージ」が変えていく店舗の顧客体験。一消費者としてもとても楽しみです。廣瀬さん、安藤さん、お話ありがとうございました!

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