【リテールAIセミナーレポート】キリン堂×フェズ、協業による取り組み事例と今後の展望について(リテールメディア先進事例)

Urumo Ads マーケットトレンド
【リテールAIセミナーレポート】キリン堂×フェズ、協業による取り組み事例と今後の展望について(リテールメディア先進事例)
目次

2023年7月21日、一般社団法人リテールAI研究会が主催する「リテールAIセミナー」が行われ、株式会社キリン堂 取締役執行役員 経営戦略本部長の寺西廣行氏と弊社代表の伊丹順平が、リテールメディアの先進事例として両社の取り組み等をお話させていただきました。

キリン堂様とフェズは、2022年9月に包括的業務提携を行い、リテールメディアの共同構築や店舗DX等を推進しております。

セミナー当日は、会場とオンラインにて、メーカーや小売業をはじめとする会員企業から90名を超える方々がご参加くださいました。本レポートでは、その概要をお伝えします。


フェズの紹介とリテールメディアの事例(伊丹)

フェズは、「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる」というミッションを達成するためにある会社です。キリン堂様をはじめ複数の小売事業者様からID-POS等の様々なデータをお預かりし、リテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」をベースに、リテールメディア領域と小売業の業務効率化(DX)領域の大きく2つの事業を行っています。

フェズの事業は、創業者である私のキャリアに紐づいています。
私は、P&Gジャパン社で営業としてキャリアをスタートし、小売事業者様の店舗をまわって、発注促進や売場づくりなど様々なオペレーションを学ばせていただきました。その後、Google社に移り、デジタルマーケティングの基礎や、データを活用して業界課題を解決することを学ばせていただきました。
端的に言うと、私を育ててくださった小売業の皆様に還元できるよう、小売業界の負(課題)をデータとデジタルマーケティングを活用して解決していく、というのがフェズという会社です。

(株式会社フェズ 代表取締役 伊丹順平)

リテールメディアについてお話するにあたり、フェズが捉えている定義を先にお伝えさせていただきます。
1つは狭義のリテールメディアで、各小売事業者様が保有する主に販促活動として使われるものです。こちらの事例として、キリン堂様と弊社が共同開発した「K.ads」を寺西様よりご紹介いただく予定です。
もう1つは、小売事業者様等からお預かりしたデータを横断化させ、市場データとして活用していく、広義のリテールメディアです。

米国では、ウォルマートさんが市場シェアをかなり取っていらっしゃいますので、データの量と質が担保されているという特徴があります。
一方で、日本では多くの小売企業様が事業を手掛けている関係で、弊社のような第三者が各社のデータを適切にお預かりしてマーケットプレイス化することで、データの価値を上げ、広義のリテールメディア事業として活用していくことが求められています。

(プレゼンテーション資料より)

フェズが開発・運営しているリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」では、約1億のID-POSデータ等をお預かりし、データマネジメントを通じて、約340ブランドの大手メーカー様や約10,000店舗の小売店様、双方に役立つソリューションを提供しています。

中でも、主力のソリューションが購買検証が可能な広告ソリューション「Urumo Ads(ウルモ アズ)」です。消費者が商品を認知してから購入、リピート購入してファンになっていくまでの一連のフローを、データやテクノロジーを使って可視化できるところが大きなポイントになっています。リテールメディアを通じた様々な広告・販促施策が、どれだけ実際の売上に繋がったかまで検証できるのが特徴です。

(プレゼンテーション資料より)

「Urumo Ads」では、デジタル広告の配信先媒体が持つユーザー属性の中から、分析した購買指標をもとに、購買親和性の高いユーザー群を自動選定できる機能『セグメントファインダー』で特許を取得しています。プランニングの段階から見込み顧客を選定でき、リーチの質と量を同時に追求した広告配信が可能になります。
こうした技術やデータに基づく効果検証・PDCAによって、飲料メーカー様においては、施策を複数回実施し継続的にブランド指標・購買指標双方の検証・改善を行った結果、視聴率・購買率のいずれも上昇し、特に購買率は3倍に上昇しました。

また、化粧品メーカー様の事例においては、複数の媒体における予算配分や使い分けが難しいという課題に対し、購買効果の可視化・検証を行い最適化をご提案しています。
特許技術であるセグメントファインダーを使った食品メーカー様の事例では、広告配信の最適化によるリーチ単価の大幅な削減に成功しています。
消費財メーカー様では、新規顧客の獲得(新規購買率の上昇)にも成功しています。

このほか、フェズでは、バイヤー様とメーカー様のためのデータ活用型商談ソリューションとして「Urumo Shopper」、購買データとリアル行動データを掛け合わせ、従来可視化できなかった顧客の店外行動傾向や他店での買い物傾向を可視化・分析できる「Urumo Explorer」なども提供しています。

(プレゼンテーション資料より)

フェズでは、現在、ドラッグストアチェーン様を中心に連携させていただき、リテールデータプラットフォーム「Urumo」にて統合データを活用したソリューションを展開しています。
今後は、スーパーマーケットやホームセンター、バラエティなどの小売企業様とも連携し、さらにデータの価値を高めていくことで、連携する小売企業様やメーカー様にとってより良いソリューションを提供していきたいと考えています。

よりスピード感を持ってリテール業界に新たな価値を提供していくためには、当社1社では難しいと思います。志を同じくする様々な企業様との提携等を通じて、しっかりと価値あるソリューションを生み出し、業界課題の解決に貢献していきたいと考えています。


キリン堂様のご紹介とリテールメディアの事例(寺西氏)

キリン堂は、関西を中心に赤い看板のドラッグストアを展開している企業です。

私自身は、アメリカから帰国した後、ジョンソン・エンド・ジョンソンで3年半、ドラッグGMS担当やEC本部の立ち上げ等を経験しました。2016年にキリン堂に入り、2019年にデジタルマーケティング領域をスタートさせ、2021年にDX開発室長、現在は経営戦略本部長として基幹システムの導入から業務改革、人事制度の改革などに幅広く着手させていただいています。

メーカー時代の経験もあって、本質的にお客様の買い物行動を正確に捉える仕組みが必要であると感じたことに加え、川上から川下まで買い物行動を楽しくしていきたいという想いのもと、小売業としての発信能力を向上しつつ、メーカー様との取り組みを強化していくことを狙いとしリテールメディアを始めました。

(株式会社キリン堂 取締役執行役員 経営戦略本部長 寺西 廣行氏)

キリン堂は、関西中心ですが、関東や北陸、中部、四国でも展開しており、今年2月末で402店舗あります。うち、調剤薬局の店舗数が163店舗、96店舗はドラッグストアと調剤薬局の一体型店舗で、こちらの割合を2025年度末までに50%まで高めていく計画です。健康と美容を中心テーマとした店舗づくりを進める中で、専門性や利便性を上げていく背景があります。

また、管理栄養士に健康相談ができる店舗も2024年度末までに20店舗へ増やす予定です。こちらは、日経新聞に掲載された取り組みで、患者様やお客様の健康データ・ID-POSデータ・喫食データ等を網羅的に活用することで、1人ひとりに寄り添った健康提案ができる基盤を作っているところです。

昨今、フード&ドラッグという言葉がポピュラーになってきていますが、キリン堂でも顧客接点の強化の一貫として食品強化型店舗を2025年度末までに30店舗へ増やす計画です。こちらは地元や地元から強く支持されている企業様と提携して進めています。

公式アプリを活用した顧客化については、現状のダウンロード数が241万人、会員数が196万人という規模になっています。プライバシーポリシーに同意してくださっている会員数も167万人おります。

(プレゼンテーション資料より)

キリン堂は、5か年計画の3年目に投入しているところで、様々な戦略を推進しています。特に、MDの強化や提携戦略を通じた取り組みに注力しています。

リテールメディアなどDX領域については、先行して進めている状況で、フェズ社との包括的業務提携によるリテールメディア事業の深耕や、自社販促・オウンドメディアの更なる強化に取り組んでいます。併せて、ドラッグ分野や調剤分野のDXも進めています。

(プレゼンテーション資料より)

続いて、キリン堂がフェズ社と提携して始めた独自の集客支援デジタル広告施策として「K.ads」をご紹介させていただきます。

メーカー様とキリン堂の協働強化により需要を喚起する企画です。メーカー様にはデジタル施策に投資(広告出稿)していただき、PDCAを回しながらクリエイティブ開発を進めていただく。キリン堂としては、店頭やアプリを使って集客支援・販売強化を行っています。

(プレゼンテーション資料より)

「K.ads」では、店外での商品認知や店舗集客の施策を、YouTubeを使った動画広告とアプリを中心に行っています。

YouTubeによる動画広告では、店舗周辺のユーザーに対してアプローチをかけ、実際に動画を見たお客様が来店したのか、購入されたのかまで検証しています。通常の動画プロモーションでは、ブランド訴求を行っているのに対して、「K.ads」では商品の価値を訴求することで、実売に繋げていくことが可能です。

また、店内においては、店内放送やサイネージによって告知し、商品の認知・理解に繋げています。目下、店内放送の番組構成見直しや配信方法の変更を行っていて、サイネージをK.adsや店内放送、アプリ施策と連動させる取り組みを進めています。

各施策による効果についてですが、お菓子メーカー様がアプリを使ってクーポンを配信した事例ですと、クーポン利用による売上が追加されることでアップリフト効果が得られています。
サイネージ施策についても、住宅洗剤やトイレ用品、シャンプー等の商品において、実施期間における売上は未実施期間と比較し明確な売上向上が見られています。

(プレゼンテーション資料より)

「K.ads」では、様々なアップデートを行いました。フェズ社との協業によって、広告効果だけではなく、購買効果まで一気通貫で可視化することが可能となっています。
位置情報によるターゲティングに加え、ID-POSデータを使った購買履歴によるターゲティングも可能になり、より筋肉質にPDCAが回せることで費用対効果の高い広告配信ができるようになりました。

レポーティングについても、ID-POSレポートだけではなく広告接触者の購買検証レポート、単月ROAS(Return On Advertising Spend)、LTV(Life Time Value)レポート、街区×居住者特性レポートも追加。メーカー様の効果検証ニーズにお応えできるようになっています。

まとめますと、現在「K.ads」で実現できることは大きく5つあります。

(プレゼンテーション資料より)

「K.ads」を活用した事例としては、化粧品メーカー様において、広告視聴率や完全視聴率も平均と比べ非常に高く、結果10万人弱の来店に繋がっています。POS効果では売上が前月比743%と売上最大化に貢献できました。

オーラル商品メーカー様では、施策期間中のカテゴリシェアが111%拡大し、前年対比で新規購入者数219%と新規顧客獲得にも貢献しました。ヘアケアブランド様でも、施策期間中のカテゴリシェアが178%拡大し、売上は前月比172%に拡大しています。このほか、医薬品についてもお取り組みをさせていただいています。


これからのリテールメディアについて(寺西氏・伊丹)

<伊丹>

これからのリテールメディアについてお話するにあたり、まずはリテールメディアがなぜ今求められているかを整理したいと思います。

(プレゼンテーション資料より)

1つは、消費者ニーズの多様化が加速しているという点です。コロナ禍による社会的な環境の変化、環境問題などSDGsへの関心の高まり等によって、人々の価値観やライフスタイルが多様化し、消費者を理解し新たな顧客を獲得することが難しくなってきています。

例えば、マーケティングで使うペルソナにおいて、最大公約数で捉えようとしてもアプローチが難しくなってきているのではないかと思います。

そして、変化の激しい消費者を捉えるために広告や販促活動をしようにも、昨今の円安や原材料の高騰等によって、メーカー様はこれまでのように多額の費用を投じていくのが難しい状況になっています。投資効率を上げる動きが加速しているような状況だと思います。

また、消費者ニーズの多様化に伴い、ブランド数・SKU(Stock keeping Unit)が増えてきています。メーカー様だけではなく、小売様も決められた棚の幅の中でニーズに応えていく必要があります。競合の増加によって、取れる棚の面積が減少していく中で、広告販促の効果を効率化・最大化させなければならないということで、新規顧客獲得の難易度は格段に上がってきています。こうした背景もあって、既存顧客のファン化に注目が集まっています。

顧客を獲得し、育成し、定着化させていくには、メーカー様と小売様の協力関係が必要になります。
端的に言うと、リテールメディアは、メーカー様と小売様が一緒に効率よく消費者を育てられる巨大なプラットフォームになるべきだと私は捉えています。

(プレゼンテーション資料より)

リテールメディアに関しては、まだ黎明期ということもあり、課題がたくさんあると思っています。いろいろな立場の方々が注目・参入してきていることもあり、定義が揃っていない、解決すべき課題が揃ってないところが1つ大きな課題だと考えています。

そして、まだまだ保有するデータの規模や質、種類が揃っているプレイヤーは少ない状況です。弊社もまだまだ拡大余地がありますが、同じ思想を持つプラットフォーマー同士が連携し、より大きな価値を創っていくという考え方を持たないと、リテールメディアの市場価値が薄れてしまうと感じています。
加えて、データマネジメント技術も追いついていないと感じています。

フェズは、関係者の方々と積極的に協力関係を築き、データの規模、質、種類にこだわり適切にマネジメントし、このマーケットを創っていきたいと考えています。


<寺西氏>

私からは、2023年3月26日に行われたショップトークというアメリカの小売業界でのカンファレンスでお話された内容を、少し抜粋してご紹介させていただきたいと思います。
(プレゼンテーション資料より)

日経クロストレンドにも掲載されていた内容ですので、ご覧になった方も多いかもしれませんが、米国においてリテールメディアの広告市場は、2019年以降どんどん伸びているということ。そして、現在ウォルマートさんが非常に大きなシェアを占めていますが、参画プレイヤーも増えている状況です。

こうした中で、私が今回ポイントとして挙げたいのは、リテールメディアに広告出稿するメーカー様にとって何が役に立っているか、というイーマーケター社のアンケート結果です。

1番多かった回答は「小売との関係がより親密になる」、2番目は「クリエイティブサービス」、3番目は「想定顧客層へのリーチ」という内容でした。

メーカー様と小売との関係を深める目的については、消費者(消費者の需要創造)を中心にするということがポイントだと捉えています。そして、まず自社内の体制と統制をしっかり構築すること、小売とブランドがJPP(Joint Planning Process)を活用して協力態勢を築くことが求められると考えています。


(プレゼンテーション資料より)

リテールメディアについて、キリン堂が考えている課題ですが、大きく3つあります。

1つ目は、リテールメディアは非常に大きなマーケットではありますが、その収益面だけに囚われず、コンテンツそのものやその展開方法の両方を強化し、お客様との接点を強化し続ける必要があると考えています。
2つ目は、企業対企業の取り組みにおける共同プランニング体制、あるいは社内体制の構築、KPIの設定などパフォーマンスレビューのプロセス構築を粘り強くやっていく必要があると思っています。
3つ目は、購買へのコンバージョン、LTV向上に繋がるリピート顧客の獲得、そして最終的には自店舗チェーンやブランドへの愛着度の向上を実現させていくために、1つ目・2つ目の継続強化が必要ということです。
お客様にとってもメリットがある「三方よし」の状況を創っていかなければなりませんので、やはり1つ目が重要だと思っています。


(プレゼンテーション資料より)

最後に、キリン堂×フェズによる挑戦ということで、これまでのお話をまとめさせていただいています。リテールDXの取り組み、あるいはリテールメディアそのものの高度化に向けた連携もまだまだ強化が必要だと考えております。


以上、講演の概要をまとめてレポートしました。なお、本レポートではサービスの詳細説明やFAQは割愛いたしました。ご不明点やご相談は、お問い合わせフォームからお願いいたします。